(Michter's Fort Nelson Distillery)ミクターズ フォート ネルソン蒸留所【バーボントレイル#16】
バーボントレイル第16弾ということで、ミクターズ フォート ネルソン蒸留所の様子を紹介します。

目次
ミクターズ フォート ネルソン蒸留所とは
ケンタッキー州ルイビルのダウンタウンにある蒸留所。蒸留所というよりミクターズの歴史を伝えるビジターセンターというのが正しい表現になるかもしれません。ここにはミクターズ発祥の地である閉鎖されたペンシルバニアの施設から持ち込まれた旧式のウイスキー生産設備が展示され、ごく少量ですがウイスキーの生産も行われています。現在の主力工場であるシブリー蒸留所(ここから車で15分ほどのところにある)は工場見学を行っていないので、ミクターズの蒸留所見学をするにはここを訪れることになります。
施設の2階にはThe Bar at Fort Nelsonというカクテル研究家のDavid Wondrichが監修したカクテルを楽しめるバーが併設されています。こちらは予約制(空きがあれば予約無しで入れる)で食事は提供されていません。
ロケーション
ミクターズの歴史
ミクターズ蒸留所は、1753 年にまで遡る歴史を持つ有名なアメリカンウイスキー製造会社で、米国で最も古いウイスキーブランドの1 つ。起源は、スイスの農民によってペンシルベニア州で設立されたシェンクスウイスキーとして始まり、禁酒法廃止の後にオーナーの 2 人の息子、MichaelとPeterに敬意を表して、ミクターズに改名されました。
1980年代に財政難で一度閉鎖された後、1990年代にJoseph J. MaglioccoとRichard “Dick” Newmanによって復活し、その際ルイビルに事業が移転されました。
ミクターズは、小ロット蒸留やシングルバレルなどが有名で、低いアルコール度数 (103プルーフ)で樽詰めすることにより、自然な風味と滑らかさを造り出します。
主力製品はUS*1 シリーズでバーボン、ライ、アメリカンウイスキー、サワーマッシュなどがあります。ミクターズは様々な賞を受賞しており、TWSC2024(東京ウイスキー&スピリットコンペティション)ではUS*1バーボンウイスキーが最高金賞を受賞しています(バーボンで最高金賞を獲得した6銘柄のうちの1つ)。
見学ツアー
ツアーの予約は蒸留所のH/P(VISIT)から行います。2024年現在、常設されているツアーは3コースあり、毎日行われる旧来のウイスキーの製法を学ぶ Discovery Tour(1h : $25)、週2回開催される伝統的なポットスティル製法についてより詳しく学ぶ Founders Tour(1.5h : $50)、月1回のみ開催されるシニアメンバーによる詳しい製法解説や樽詰め体験が行われるLegacy Tour(2h : $100)が設定されています。併設されるバー(The Bar at Fort Nelson)の予約もここから行います。
ツアーの様子
ツアーは建屋1階の入り口近くにあるグッズショップの会計でチェックインを行い、商品を見ながら開始時間を待ちます。

エレベーター前にも受付がありますが、そちらは2階にあるバーの受付。

時間通りにツアー開始。1回あたりの参加者は十数名ほど。施設のキャパを考えるとこの人数が最大か…。

ウイスキー造りの水
部屋を移り蒸留所紹介の動画視聴後、まずはウイスキー造りにはかかせない水についての説明からスタート。ケンタッキー州はライムストーン(石灰岩)層のおかげで良質な水を得ることが出来るなどの説明があります。一番良質な水を得られるのがバーボンのメッカと言われるバーズタウン周辺になりますが、ここルイビルでもライムストーン層により良質な水が確保出来るため、多くのウイスキー製造会社が設立されたとのこと。


展示されているライムストーンにも触れることが出来ます。

ルイビルでは良質な水に恵まれたこと、かつ蒸留所の横を流れるオハイオ川の水運により製造されたバーボンを全国に出荷しやすかった地理的なアドバンテージもウイスキー製造が発展した理由とも説明がありました。
ウイスキーの材料とミル工程
ここでは使われる材料と模型を使い原料の粉砕工程について説明されます。

糖化、発酵工程
糖化について説明を受けた後、発酵中の原料を実際に見ることが出来ます。こちらは木製の樽でペンシルバニアでの製造時に使われていたもの(容量は1樽で500ガロン)。現在の主力であるシブリー蒸留所では木製の樽ではなく、コンピューター制御されたさらに大きなステンレス製が使用されているとのこと(1万数千ガロンと言っていたか…)。ミクターズでの発酵工程は5日と説明がありました。

蒸留工程
発酵の後は蒸留工程です。展示されているのはこちらもペンシルバニア時代に使われていたポットスティル。現在ではポットスティルによる蒸留では無く、バーボンの製造で一般的に使われるコラム(連続式蒸溜機)が使われています。
ここで参加者から質問があったのが蒸留にかかる時間についてですが、1樽(500ガロン)を蒸留するのにこのポットスティルで8~9時間かかるとの回答がされていました。


ポットスティルは銅製(Vendome Copper and Brass Works製造)

熟成樽
ここでは樽に使われる木材と樽内部を焦がすチャーについて説明があります。木材の切り出しはバットの製法と似ているなどの話がありました(実はこの蒸留所の道を挟んだ先にはルイビルスラッガーのミュージアムがあります)。


ミクターズではまず樽をトーストし、その後チャーリングを行います。チャーレベルについては特に言及されていなかったはず…。

樽詰め工程
ミクターズこだわりの低アルコール度数(103プルーフ)による樽詰めについて説明があります。熟成前に低い度数まで加水することにより容量が増えてしまうため、多くの樽を準備し、多くの保管場所を必要とするなど、手間とコストがかかるとのこと。メリットとして、ボトリング時のアルコール度数調整の加水量が減ることにより、熟成感がそのまま維持出来、リッチでスムーズなウイスキーを生み出すことが出来ると話がありました。

試飲
ツアーのさいごはミクターズの試飲です。試飲出来るのは以下の6種類。103プルーフと125プルーフで樽詰めされたライウイスキーの比較に始まり、ストレートバーボン、サワーマッシュ、アメリカンウイスキー、バレルストレングスと試飲していきます。
やはり先の説明であったように、103プルーフで樽詰めされたウイスキーはとげとげしさの無い、やさしい感じを受けました。



以上がミクターズの蒸留所ツアーの様子でした。
さいごに…
最近評価の高いミクターズについて学ぶことが出来たのは良い経験となりました。ツアーガイドの英語も非常に聞き取りやすかったのが良かった…。ただ本音を言えば現在主力で稼働している工程を見たかったというのはあります。いつかシブリー蒸留所が解放される機会があれば訪れてみたいですね。

先回のバーボントレイル#15(ログスティル蒸留所)の記事はこちらから
essentialquality.hatenablog.com
同じくルイビルのダウンタウンにあるエンジェルズエンヴィ蒸留所の記事はこちらから